学会発表のための演題登録における倫理的手続きに関する指針

2023年12月1日
一般社団法人日本検査血液学会

日本検査血液学会(以下、本学会)では、学術集会において発表される全ての演題に対し、研究対象者の尊厳と人権を守り、関係する法律、政令、省令、指針、通知等を遵守して発表が行われることを求める。具体的な要求事項は以下の通りである。

「2024年度以降の本学会学術集会におけるすべての演題について、応募者は演題登録時までに、自身の演題が以下のどのカテゴリーに分類されるか判断し、登録時に入力すること。また、それぞれのカテゴリーに応じた対応を予め済ませること。演題登録時までに対応が終了していない演題は受け付けない。」

なお、本要求事項は、本学会会員・非会員による研究活動を制限するために定めるものではなく、研究者等が対象者の保護と福利を最優先とし、法律、指針等に定められた範囲で自由な学術活動を行うための規範として定めるものである。自身の応募演題が倫理審査を受審し承認を得る必要がある要項を含むか否かについては、あらかじめ所属研究機関等の倫理審査委員会等において確認を済ませることが望ましい。

また、演題登録に際し申告すべきカテゴリーが不明な場合には、まず所属する研究機関等の倫理審査委員会等に相談されることを推奨する。その結果を踏まえ、学術集会主催事務局に相談されたい。

演題カテゴリーは次の3つに分類される。

◆ カテゴリー1:倫理審査の受審が不要な演題である。

◆ カテゴリー2:倫理審査を受審し、研究の実施に関する承認を得た演題である。

◆ カテゴリー3:その他(詳細について説明文を参照のこと)。

カテゴリーの選択にあたっては、以下の説明文を参考にすること。

カテゴリー1:
● 侵襲・介入を伴わない症例報告(注1)である。

● 用いる既存情報のすべてが、既に特定の個人を識別することができない状態(注2)にあるもののみを利用した研究の演題である。

● 論文や公開されているデータベース、ガイドラインのみを用いる等、すでに学術的な価値が定まり、研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報を用いた研究の演題である。

● 法令の規定により実施された研究(注3)の演題である。

● 法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究(注4)の演題である。

● 培養細胞や人体から分離された微生物およびウイルス等を用いた基礎的研究で、人に由来する試料や情報を利用しない研究に関する演題である(注5)。

● 医療社会学的研究、研究倫理・医療安全・教育・災害対策・研究デザイン策定やシステムに等に関係する研究で、研究対象者が存在しない研究に関する演題である。

カテゴリー2:

● 「侵襲」や「介入」等、研究を目的とする行為を伴う研究または症例報告であり、すでに所属機関等において倫理審査を受審し承認を得ている(一括審査での実施許可を含む。以下同じ)。

● 要配慮個人情報(注6)を取得して行われた研究であり、すでに所属機関等において倫理審査を受審し承認を得ている。

● 新たに同意を得て実施した観察研究であり、すでに所属機関等において倫理審査を受審し承認を得ている。

● 既存試料、情報を用いた観察研究(注7)であり、すでに所属機関等において倫理審査を受審し承認を得ている。

カテゴリー3:

● 特段の理由により上記カテゴリーには該当しないが、所属機関等において適切な手続きを済ませている(具体的には、高難度新規医療技術・未承認新規医療品等による医療の提供を伴う症例報告等が想定される)。


注1: 侵襲・介入を伴わない症例報告の定義

診療等の一環として収集された情報をまとめ、演題とするものをいう。ただし、診療等の過程で得られた情報に加え、独自に試料等に対し測定や検査を行った場合には、症例報告の範囲を超えていると判断される。また、ひとつの演題に含まれる対象症例数は規定しないが、複数の症例から得られた情報を取りまとめ比較検討や統計学的な解析・解釈を行うような報告も症例報告に該当しない。

これらの場合には別途、カテゴリー2に応じた対応が必要となる。加えて、症例報告に際しては、個人情報保護法および関連法令等を遵守するとともに(すなわち、対象者が特定され得る情報を発表に用いてはならない)、可能な限り対象者より同意等を得ることが望ましいのは言うまでもない。
高難度新規医療技術・未承認新規医療品等による医療の提供を伴う症例報告については、各機関の方針に則った手続きを行うこと (カテゴリー3参照)。

注2:「用いる既存試料・情報のすべてが、既に特定の個人を識別することができない状態」について

別の研究等の目的のため対象者の同意を得て過去に収集された試料・情報を用いるが、当該試料・情報からは、個人の識別ができないよう、あらかじめ個人識別符号が完全に削除された状態をいう。いわゆる対応表に相当するものを残し、個人識別符号を復元できるような状態にあるものは該当しない。

なお、個人情報保護法において「仮名加工情報」「匿名加工情報」の用語が用いられているが、これらについては法律上の定義が存在するため、本用語の使用に際しては個人情報保護法、および関連する法令・ガイドライン等を参照のこと。

注3:「法令の規定により実施される研究」について

当該研究については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下、倫理指針)、および当該倫理指針のガイダンスにおいて、「がん登録等の推進に関する法律に基づく全国がん登録データベース及び都道府県がんデータベースへの登録等」の例等が示されている。詳細については倫理指針およびガイダンスを参照のこと。

注4:「法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究」

注3と同様、倫理指針、およびそのガイダンスにおいて例が示されているので、詳細については倫理指針およびガイダンスを参照のこと。

注5:人を対象としない研究は倫理指針の対象外であるが、別途、当該研究に関連する法律、指針等を遵守すること。

注6:要配慮個人情報について

「要配慮個人情報」とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。詳細については関連法等を参照のこと。生命科学研究においては、「ゲノムデータ」に医学的なアノテーション(解釈)を付加し、医学的意味合いを持った「ゲノム情報」等が要配慮個人情報として位置づけられる。

注7:既存試料、情報を用いた観察研究について

自らの研究機関で保有している既存試料・情報を用いる研究の場合であっても、原則としてあらかじめインフォームドコンセントを受けることが必要である。倫理指針では、インフォームドコンセントを受けることができない相応の理由がある場合には、研究の内容についての情報を研究対象者等に通知するか、容易に知り得る状態に置くとともに、同意を撤回もしくは拒否できる機会を保障することが必要であると定められている。詳細については倫理指針を参照のこと。
なお、企業等が自身の保有する情報を用いて行う研究においては、個人情報保護法に従い加工された情報を用いるものとする。